ぼそぼそ

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参加する本

 早世した学者の書斎から, ある日音が聞こえるようになった. どうやら, 生前に積読されていた大量の本の中の一冊が暇を持て余し, 自分の中に書いてあることを喋り出したみたいだ. 彼の家に片付けに来た知人の学者がその本を見つけ, 会話が出来ることに気づいた. どうやらこの本は議論が出来るらしい. 興味を持った彼はその本を自分の家に持ち帰って書斎に置いた.

 翌朝, 彼はあちこちから聞こえてくる議論の声で目を覚ました. どうやら持ち帰ってきた本が他の本と議論を始めてしまったようだ. 議論を止めようにも, 本の知識に敵うわけもなく任されてしまう. やがて議論はヒートアップし, 騒ぎを聞きつけた管理人に彼は追い出されてしまった. 

 彼の本たちは黙ることを覚えた.