我が家に帰れば, たくさんのことが変わっているのに気がつくだろう. 人生で一番長い時間家を離れたのだから, いろいろな違いが生まれているはず. 人, 形, 匂い, ...
僕の好きだったものは目減りしているかもしれない. 友人がいなくなり, 見覚えのない顔が増える. 通った建物はもうないかもしれない. 時間とともにある香りもまた, 嗅ぎ覚えのないものになっているかもしれない.
それでも, 僕はそこに自分だけの箱庭を見つけるだろう. 自分が好きでたまらないものというのはずっと変わらない. これからも変わることはない. 箱庭は手入れをされなければ廃れていく, けれども確かにかつての趣を残すはず. すべてが失われることはなく, 何かが残されている.
なくしたものに思いを馳せて, 泣きたい気持ちになるかもしれない. 人, 形, 匂い, ... なくしかたには色々ある. 失われたり, 変わり果てたり. 涙こそ出なくとも, 泣けたらよいのにと思うかもしれない.
辛いときは, そこにあるものに目を向ける. すべてが失われることはなく, 何かが残されている. そこに残ったものを見れば, 心地よさで満たされるだろう. それを使って, またなにかを作るのだ.