「憧れるのを止めましょう」とある人が言った. ところで「憧れる」とはどういうことだろう?
憧れることは, 必ずしも接近することを意味しない. 憧れから接近に向けた努力が生じることもあるが, 必ずしもそうではない. 人は時として憧れの人に近づこうとするが, 遠くから眺めて過ごすこともある. 人によって傾向に違いがあり, 同じ人でも異なる憧れの人の前では異なる振る舞いをすることがあるように思う.
憧れとはadmirationであり, 相手に対する感情的で受動的な振る舞いだ. 憧れる人は, 相手の存在や行動を受容する. それにはしばしば時間がかかる. 他人の考えを理解し, 行動を分解し, 自分のものにするためには時間がかかるからだ.
彼の言う通り, 目の前に向き合った人に憧れるのは確かに良くないのだろう. 接近するも何も, 既に相手は目の前に居る. 勝負事の文脈で向き合っているのなら, 相手をadmireしている暇はない. そして, プレイヤーには行動が求められる. 勝たなければいけないとき, 目的のためには遠ざかることも選択肢に入れなければいけない.
僕は他人に憧れる. 僕はまだ, 自分の憧れの人と向き合ったことはない. 今の所, 僕はそのことをとても幸運なことだと思っている.